「ブラッド・ブラザーズ」というミュージカル

ロンドン、ウエストエンドで受けたミュージカルの衝撃

1990年の春だった。

生まれて初めての飛行機、生まれて初めての海外。

ロンドン、そしてミラノ。

アンカレッジ経由で飛ぶ長時間のフライト。

その座席の狭さと機内のうるささ。

「まるで石打丸山に向かうスキーの夜行バスみたいだ。」

そう思ったのを覚えている。

両隣は劇団の先輩俳優お二人、針のむしろである…。

 

明け方、まだ暗いうちにヒースロー空港に降り立つ飛行の窓から見た景色は、

「ピーターパン」の映画の幕開けとおんなじに見えた。

レスタースクエア、バーガーキング、ハーフチケット

あらかじめ、ロンドン渡航&観劇経験のある兄に電話をして訊いた。

「何か、『これ観ておくといいよ』ってオススメはある?」

「そうだね、ブラッド・ブラザーズがいいんじゃないかな?ハーフ・チケットも出てるかも知れないし。」

「わかった、ブラッド・ブラザーズね。で、ハーフ・チケットって…何?」

レスタースクエアまで行って、バーガーキングのところを…そうするとそこにハーフ・チケットのブースがあって…。」

何故、その時にメモを取らなかったのか…後悔しながら駅を出て、マクドナルドでもロッテリアでもない、異国のバーガー・ショップを見つけ、ホットチョコレートを飲んだ。美味かった。

そして、見事辿り着いたチケット・ブースに並び、掲示板をチェックすると・・・あった、ブラッド・ブラザーズ

当日のソワレのチケットがだいぶ安い値段でゲットできそうだった。

ひょんなことから、会社に借金していくハメになったロンドン・ミラノツアーの始まりだった。

“Cuts Down!!”と彼女は言った

列に並ぶと、前は太った、いや待て、この表現はよろしくない。

ふくよかなおばちゃ・・・おばさま。

訊いてもいないのに、ワシントンDCから来たのだと教えてくれた。

なんでも、ご主人がUSアーミーだか、エアフォースだかで、日本に住んでいたことがあるらしい。
娘は少し日本語ができると言っていた。

後ろは、イスラエルから来たおじちゃんだった。

高校卒業以来、英語の勉強していなかった(芸大時代はイタリア語と初級の単位を落としたドイツ語だった。)ので、嫌な汗を書きながらミセス・ワシントンDCのお相手をしていると、突然彼女が言った。

“Oh, Yesterday, We 8 Cuts Down!”

“・・・Sorry?”

“YESTERDAY, WE ATE   CUTS DOWN!!”

“You・・・あ、ate?・・Cuts・・・あ!?カツ丼???”

訊けば、ピカデリーサーカス駅の近くのにアジア料理のフードコートみたいなのがあって、そこでカツ丼が食べられるというではないか。(もちろん、次の日の昼に行きました。ワタシ素直なニホンジン。)

そうこうしているうちに無事チケットをゲットし、夜までコヴェントガーデンとか覗きながら時間を潰し、ほど良き時間に劇場へ。

ブルータス、お前もか

アルベリー・シアターの座席について驚いたのは、さっきのミセス・ワシントンDCもイスラエルのおっちゃんも、同じ「ブラッド・ブラザーズ」を観に来ていたことだった。

斜め後ろには、高校生ぐらいの若者数人。
ちょっとヤンチャな感じのにぎやかさ。(おいおい、君たち劇場ではどうかお静かに。ワタシ生真面目なニホンジン。)

作品名しか知らず、英語力も乏しく、初の海外で緊張していた、にも関わらずグイグイ引き込まれていった。

ストーリーが(もちろんなんとなくだけど)わかるのだ。

とにかく役者が上手い。少人数なのに、とにかくみんな上手い。

あれよあれよという間に物語は進み、最後の幕が下りてふっと後ろを見ると、あの若者たちがみんな号泣していた…。

「アスペクツ」も観たよ、大好きなあの音楽。

「ファントム」も観たよ。つい2枠のヘアドレッサーの動線を追っちゃった。

「キャッツ」のグリザベラの歌うメモリーは、押し付けがましくて好きじゃなかったし、アンダースタディーのミストフェリーズのフェッテは手に汗握ったよ。それでも、日本人らしきお客さんたちはスタンディングオベーションだった。

「レ・ミゼ」のバルジャンはデンマークかどっかのオペラ歌手らしいけど、あんまり上手じゃなかったし、ジャベールは化粧が濃すぎて、途中からデーモン閣下にしか見えなかったよ。それでも、日本人らしきお客さんたちはスタンディング・オベーションだった。

「ミス・サイゴン」も観たよ。「ジョゼフ」も。
やっぱり売れてるショーに出てる奴らはめちゃめちゃ上手かったよ。

でもね、ブラッド・ブラザーズにやられたのよ。

オタク、ブラッドブラザーズ知ってる?

日本に帰ってからもCD聴いて、日本版(再演)も観た。
(でも、やっぱりロンドンで観たあの感動は、正直なかった。)

ヴォーカルブックももちろん購入。

渋谷のすみや(ここを知ってる人は今や少ないんだろうな)でテルアビブ・キャスト版見つけて思わず購入。

その後、ロンドンでもう1回、ニューヨークで1回観たよ。

キャッチーなナンバーがあるわけでもない、激しいとか華やかなダンス・ナンバーがあるわけでもない、なのにエラく響くし沁みる。

なんだろう、この魅力。

脚本・作詞・作曲が一人のクリエイターだということが、きっとものすごく大きな要因なんだろうと思う。

思えば、「Spifiregrill(この森で、天使がバスを降りた)」でも似たような心の掴まれ方をした。

作品自体がまるで目の前で動いている生き物のようだ。

そして、ブラッド・ブラザーズ

そして、観てきましたよ。東京国際フォーラムで。

カッキー&ウェンツのキャストを知った時には、すぐに「良さそう、観たい!」と思ったし、

壮麻さん、堀内さん、Mr.燻銀・安福さん、家塚さん、河合さん・・・と懐かしいお顔。

盤石のキャスト陣。

興奮を禁じ得ませんでした。

一人一人のパワーと地力がなければ成り立たない、この作品。

新生ブラッド・ブラザーズ、このキャストで観れて良かったです。

今のご時世、本当に幕が開くまで分かりませんからね。

こういうドキドキは、できれば早くしないで済むようになって欲しいものですな…。

一つ欲を言えば、もっと緊密な劇場空間で観たかったかなぁというのはあるかも。

さて、久しぶりにテルアビブ版のCDでも聴くとするか。

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