とても美しい五月に すべてのつぼみが開く
僕の心の中には 恋が芽生えた
5月ももう下旬なのだが、何故かふとこの曲を思い出した。
シューマン作曲の歌曲集「詩人の恋」の“美しい五月に”。
ボクの中では、「詩人の恋」と言えば、もう誰がなんと言おうと、フリッツ・ヴンダーリッヒである。
(ちなみに「冬の旅」と言えば、フィッシャー・ディースカウではなく、なんと言ってもヘルマン・プライだ。)
なんて美しい歌声だろう。
(ヴンダーリッヒの歌う、魔笛の「なんて美しい絵姿」も美しかったっけ。)
5月に特別な思い入れがあるわけでもないのに、と書こうとして、
「いや待て、意外とあるのかも知れないぞ。」
なんてことを考えた。
かれこれ、30年近く前の話。
劇団の公演で中国に行った。
北京・長春・瀋陽・大連の4都市を約1ヶ月かけて回るツアーだった。
この時がたしか5月頃だったように思う。
木々の葉の緑がものすごく目に焼き付いている。
日本の同じ時期に見る木々の緑と比べると、ずっと濃い色で、
「土地によってこんなにも違うんだ」
と驚いたことを覚えている。
それから十数年経って、初めて福島のブリティッシュ・ヒルズに行った時も5月だった。
その数年前に俳優として人前に立つことからは足を洗い、歌唱指導の仕事などは細々としていたものの、
「これからは全く別の仕事をしよう」とか、色々悶々とした時期があった。
それなりに暗中模索、試行錯誤したあと、専門学校で仕事をし始めた最初のGWだったように思う。
その時に、ふと目にした木々の葉の緑もまた、それまで目にした色と全く違って見えた。
「自分の精神状態によってこんなに違うんだ」
と驚いたことを覚えている。
うちは父も母も同い年の5月生まれだった。
誕生日も近かった。
二人とも、もういないということが不思議に思える。
人間(の意識)は死んだあと、一体どこに行くのだろう?
う〜ん、思い入れってほどではないのかも知れないけれど、5月というのはいろんな思い出がなんだか浮かび上がってくる季節のようだ。
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