映画版「キャッツ」の感想を見て考えたこと

ミュージカル「キャッツ」は誰の作品か?

巷で話題のトム・フーパー監督の映画版「キャッツ」

この映画版「キャッツ」、ネット上いろんなところでかなりの酷評が見受けられるのでついつい読んでしまうのだが、これを書いている時点でボクはこの映画をまだ観ていない。

じゃあ、何故まだ観てもいないのにこの記事を書いているかというと、そうした映画評の中に「それは違うんじゃないかな。」と思う内容がいくつかあったからだ。

酷評のうちかなりの記事が、劇場版のミュージカル「キャッツ」と今回の映画版を比較している。

で、かなり乱暴な要約ではあるが、その評を書いている筆者が、劇場版の「キャッツ」を「いろんな猫が次々出てきてシンプルにエンターテイメントとして楽しい作品」的な理解をしていると思えるものが少なからずあったのだ。

いやいや、それは違うだろ。

自分はそう思う。

「キャッツ」には既に映画版が一つ存在していて、ボクの手元にもそのDVDがあって、それには特典ディスクとして「キャッツ」がミュージカルとして産声をあげた当時のことについて、振付師のジリアン・リンや演出家のトレヴァー・ナン、作曲者のロイド・ウェバー自身のインタビューが入っているのだ。

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ミュージカル「キャッツ」が持っていたであろう哲学性

T・S・エリオットの詩集(自分が持っているのは日本語訳のもの)を読んだ上でミュージカル「キャッツ」を観て、この特典映像の一連のインタビューを聞くと、「キャッツ」を舞台化、それもミュージカル化する上で、初演時の演出家トレヴァー・ナンが果たした役割がかなり大きいのだろうと考えずにはいられない。(この点はロイド・ウェバー自身も語っている。)

作品全編を通してのオールド・デュトロノミーの存在と、2幕頭の“The Moment of Happiness”を通過して、ラストでグリザベラが選ばれし猫として天上に昇っていくまでに、一貫して漂うその一種哲学的な空気は、文字通りトレヴァー・ナンが【演出】したからこそなのだ、うん、そうに違いない。

これも想像に過ぎないのだけど、おそらくロングランを続け、いろんな国で次々に上演を重ねていく中で、そうしたオリジナル演出の持っていた演出意図が薄れて行った結果、「キャッツ」は「たくさんの猫が次々紹介される歌と踊りのエンターテイメント」的なものになってしまったんではなかろうか・・・。

もちろん、これは「キャッツ」に限らず、例えばハロルド・プリンス演出の「オペラ座の怪人」なんかでも同じことは起こっているに違いない。(かつて、この作品の演出についてBBCのインタビューにプリンスが答えているのを見たことがある。その内容は、自分の思いもしないようなエピソードが含まれていて、「これを聞かずにファントムはやっちゃいけないんじゃないか?」と思ったものだった。)

ま、こうした部分は、ロングランの宿命なのかも知れないけど・・・。

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「キャッツ」は誰の作品か?

で、「キャッツ」に話を戻すと、要はボクらが知っている舞台版のミュージカル「キャッツ」という作品は、もともとR・S・Cの演出家であるトレヴァー・ナンがT・S・エリオットの詩集と、新たに付け加えられたグリザベラ(オリジナルの詩集には登場しない)という存在と「メモリー」という詩(ナンバー)を、この作品を単なる歌と踊りだけのショーで終わらせないために緻密に計算して再構築したものであるということだ。(もちろん、そこには振付師ジリアン・リンの類い稀なる才能と振りがあったわけだけど。)

更に、その演劇的な要素がある意味風化してしまったミュージカル「キャッツ」もおそらく世界中にたくさん存在していて、それを受け取った観客の中には「キャッツ楽しい~。」という人達もたくさんいるであろうということ。

そんな中、今回の映画版「キャッツ」はおそらく、そうした劇場版とは全く違ったアプローチで捉えられ、創られているのだろうなと想像している。(何たって、まだ実際に観てないからね。)

結局、ロイド・ウェバーの「キャッツ」であることに違いはないんだけど、やはりディレクションの持つ意味というか存在(責任?)は大きくて、それによって今自分が観ているのが「誰のキャッツなのか」という違いを生むのだ。

ボクが持っている「キャッツ」のDVDは、ロイド・ウェバー自身が実現したかった“大編成のオーケストラによる音楽”がメインだったんじゃないかと思うし(ミストフェリーズのダンス・シーンが無かったり、グロール・タイガーの場面も削られているのが個人的にはかなり残念。)、要はそういうことなんじゃないかな。

というわけで、今回の「キャッツ」は「トム・フーパーのキャッツだ」と考えたら、舞台版「キャッツ」が好きで、それが基準となってる人でも(多少は?)冷静に客観的に観れるんじゃないかと考えたりする。

さて、賛否両論の映画版「キャッツ」いつ観に行けるかな・・・。

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