いきなり結論から書きます。
人前であがらずに話す方法は…ありません。
少なくともボクの知る限りでは、ですが。
ただ、人前であがってもちゃんと話せる(伝えるべきことを伝えられる)方法はあります。
少なくともボクの経験から言えば。

舞台に立つ俳優は1ヶ月、2ヶ月単位で毎日何時間も稽古をします。
それ以外の時間、移動時間や自宅で自由になる時間も台本を片時も離さず、何度も何度も自分の中で稽古場での稽古を思い返し、ダメ出しのメモを見て、文字通りカラダに染み込むまで、セリフの一つ一つ、役の情念の一瞬一瞬を咀嚼していきます。
それでも、そこまでやっても、人前に立つとで魔が刺す瞬間があります。
初日の緊張、自分のコンディション、客席の空気、物音、客席で光る隠し録りの小さなランプ…。
ほんのちょっとしたことで、本当に「フッ」と魔が刺して、アタマの中が真っ白になる。
セリフが出てこない…。
それでも、作品の流れを止めない、登場人物がちゃんとその場、その瞬間を”生きて”いられるようにするためにこそ、声やカラダヲコントロールするための基礎訓練が必要なのです。
ましてや、ミュージカルなんて音楽を伴って進行していきますから、少しセリフ(歌詞)に詰まったからといって、芝居と違って勝手に間を取るわけにはいきません。
4分の4拍子の1小節を”本日に限り”4分の6拍子にするとかいうような、電車の時間調整みたいなことはそうそうできないのです。
そのためには、初日で緊張していようが、気になるあの人が観に来てくれてドキドキしていようが、悲しい出来事で心が沈んでいようが…人前で伝えるべきこを伝えられるだけのパフォーマンスができなければなりません。

要は、
「緊張した時に何ができるか?」
が重要なのです。
それを実現するためには、
- 思考・感情の流れを確実に掴んでいること
- 豊富な語彙を持っていること
- 魅力的な声を持っていること
- しなやか(=雄弁)なカラダを持っていること
をモノにできているかどうかが運命を決める分かれ道のように思います。
人前であがらず(緊張せず)に、自由に伸び伸びと話せる人も、もしかしたらいるのかも知れません。
だからと言って、そう言う人の話すことが必ずしも効果的に聞き手に伝わるとも限りません。
「緊張感を伴わない」ということは、一種「散漫で集中力を削ぐ空気を作り出している」可能性もあるからです。
大事なことは二つ。
ひとつは、
あなたが何を話しているか(=情報)が正しく相手に伝わること。
そのためには、まず普段から呼吸を意識して声の大きさをある程度一定にできることや、言葉一つひとつの発音がクリアであることが重要です。
そして、ふたつめは、
あなたがどんな感情でそれを相手に伝えようとしているかということ。
ただ単に正しく情報を伝えるためだけだったら、資料を配る方が早いわけです。
音声も録音したものを一人一人にヘッドフォンで聴いてもらった方が確実かも知れませんよね?
ということは、つまり、
あなたが同じ空間で同じ時間を共有してだれかに何かを伝える時には、感情も共有すべきだということです。
そこでは、人前で緊張していることも聞き手と共有してぜんぜん構わない、いやむしろ共有すべきものだとさえ思うんです。

人前であがらずに話す方法、それは、人前で上がっても話せるようになること。
そのために、
- 日常から呼吸を意識する
- 声の大きさを一定に保つ
- 言葉ひとつ一つを丁寧に話す
- 緊張感も共有すべきものの一つだと知る
- 自分の感情を聞き手と共有する
といったことを日頃から心がけることです。
そうすれば、たとえ緊張していても(終わってみると)納得のできる話し方(スピーチやプレゼン)ができるようになります。
さぁ、緊張感を仲間にしましょう。
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