「あなたがどんなに賢い若者かなんてどうでもいいわ。間違いを学ぶ唯一の方法は経験なのよ。」キャメロン・ディアス
橘玲(たちばな あきら)さんの「人生は攻略できる」(ポプラ社)を読んだ。
橘さんが若い読者向けに書いた本で、その中には、
ひとは無限大の可能性を持って生まれてくるけど、その選択肢は年齢とともに減っていく。
なんていう、50代も後半に差し掛かろうとする自分にとっては、この上なく痛い文章も出てきたりする。
こう書くと、
「じゃあ、なんで読むんだ?そもそも若い人の本なんか今更読んだって仕方ないでしょ?」
なんて言われてしまいそうだが、それは、
“まさにこの本の読者層である若者たちと接することが今の自分の仕事のメイン”だからである。
もちろん、専門は舞台芸術に関することで、人生の攻略法を教えることが専門なわけではないけれど、特に「食えないの仕事」の代表である“舞台”に携わって、曲がりなりにもここまで生きてきた身としては、「華やかな世界」を夢見て後からその道に迷い込んでしまった若者たちが、今後の人生を少しでも幸せに歩んでいけるように何かできることはないかと考えずにはいられないのも事実・・・。
あとは、世の中が、時代が、これまでなかったようなほど恐ろしい速さで変化しまくっている今、自分自身もその変化に置いていかれないように学び続けねばと考えているからでもある。
(高速の下りエスカレーターを、ヒィヒィ言いながらよたよたと登っているみたいな体感だけど・・・。)
“圧倒的な努力”ができるのは好きなことだけ
この本な中で橘さんは、アップルのスティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式で行なったスピーチを例にあげて、
スピリチュアルが拒絶するもので妥協するな
と書いている。(斎藤一人さんは、これを「正しいこと」より「楽しいこと」と表現している。)
もう一つ重要なことは、好きなことと得意なこと(言い方を替えれば、人から評価されたり、よく頼まれたりするようなこと)が違った場合には、
好きなことより得意なことを選んだほうがうまくいく。
とも書いている。
個人的には「好きこそ物の上手なれ」も嘘ではないが、「下手の横好き」が存在することもまた事実だと常々感じているので、これには妙に納得してしまった。
舞台の世界ではとかく、
得意なことを捨てて好きなことを仕事にすると、経済的には厳しい現実にぶち当たる
ことが多い。

自分自身、一度は田舎に戻り就職してから舞台の世界に飛び込んだこともあるけど、
「まずは得意なことできちんと生活をして、その上で好きなことをコツコツ続ける」
というのは決して「諦める」とか「負ける」ということではないと心底思う。
舞台の役者が食えない理由
次に、仕事という視点で見た時の俳優について、映画俳優はクリエイター、舞台俳優はスペシャリストの世界だと説明している。
演劇はたしかにクリエイティブな仕事だけど、その収入は劇場の規模、料金、公演回数によって決まる、大評判になれば連日満員だろうが、それ以上利益は増えないから、富を拡張するには広い劇場に移るか、公演回数を増やすしかない。
いやいや、広い劇場に移ろうが、公演回数を増やそうが、チケットが売れないことには利益は増えないのだ。
(テレビ局主催の海外からの招聘ミュージカルなんて、見るからに関係者に招待券バラ撒いているに違いないと思わずにはいられないものも少なからずあったりする・・・。)
この点は少し前にニュースになったキャラメル・ボックスの状況なんかが物語っているように思う。
その点、劇団四季は(というより浅利慶太氏は)「舞台で食っていく」ことを一代で成し遂げ、今尚それを受け継ぎ持ちこたえているわけだから、やはりとんでもない集団なのだと思う。
ミュージカルは、演劇、ダンス、オペラを始めとしたクラシックと比べても、圧倒的に作品を上演する上での必要経費が高い。一見、華やかな世界ではあるけれど、実際はみんな厳しい現実の中で生きているのだ。
(“夢を売る商売”だから、それをおおっぴらにしちゃうわけにもいかないところがまた切ない・・・。)

評判が利益を生み出す仕組み
この本の中では人生を攻略するために、幸福の資本である3つ、人的資本(=仕事)・金融資本(=お金)・社会資本(=愛情・友情)を自分の価値観に基づいて最適化するということを説明している。
さらに、社会資本とはベタな人間関係ではなく、「評判」のことだと言われるようになっているとも書かれている。
これなんかは、西野亮廣さんがいろんなところで話したり書いたりしていることがまさにそうなんだと思うけど、
「評判」=「信用」
ってことだろう。
舞台や映画の世界でも、チラシや映画のエンドロールに名前が出ることを“クレジット”と呼ぶ。
インターネットのおかげで、個人が広く自分や自分のしていること、できること、やりたいことを知らしめることができるようになって、今までとは違った形で社会資本(評判)を高めることができるようになっているということだ。
Show Roomなんかもある意味そのためのツールだと言っていいと思う。
そう考えると、
- 舞台は食えない
- 好きなことより得意なことを選んだほうがうまくいく
- 社会資本を得る、高めるためのツールは揃っている
ってことだから、今の若者たちには勝機が転がっているんだろうと思う。
ただ、そのためには、ただボーッとしてたらダメよね。
ディズニーの「いつか王子様が」みたいに、ただ歌っててもダメ。踊っててもダメ。
「金がないなら知恵を出せ、知恵がないなら汗をかけ」
と申しますから、知恵がないと、結局は汗をかく、つまりいわゆる労働で、時給いくらで、バイトしながら日々を過ごすしかなくなってしまうわけだ。

幸福に生きるためのヒント
それはいろんなとこに転がっているんだと思う。
ただ、それに気づかないのだ。
ただ、それが見えないのだ。
新しい視点を持たないことには。
(自分も含めて、ね。)
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