声は腹から出すものだから・・・
人生初の大腸内視鏡検査デビューを目前にしている。
戦いはすでに数日前から始まっていた。
医者から(厳密に言えば看護士から)渡された予約表には、
(3日前から)昆布・わかめなどの海藻やキノコ、ゴマ、とうもろこし、果物の種、こんにゃくなど消化の悪いものは食べないでください
の文字が。
そして、前日は21時までに(脂肪を避けた)軽い夕食を済ませ、就寝までアルコール、コーヒー以外の水分で就寝前には薬(要は下剤)を服用。
さらに当日、朝は当然ながら朝食抜き。以下の説明文に従い検査に向けての準備。
7:30 吐き気止めの薬を服用。1,800mlの水に下剤と腸の泡を取る薬を入れた飲み物(ちょっとポカリ風の味)を準備。
8:00 最初の1杯に更に下剤を投入し飲み始めます。
以降、11時までかけて15〜20分おきにコップ1杯ずつ飲み干していきます。
この間、すっかりトイレとお友達状態。
そんな時、ふと“黄金のトランペット”の異名を取った名テノール、マリオ・デル・モナコのことを思い出した。
当時は「下剤はやったか?」と訊かれるのが当たり前だった。
あれはたしか学生時代、「スカラ座の名歌手たち」という本だったか、オペラ歌手のキャリアについて書いた本の中にマリオ・デル・モナコが紹介されていた。
その中で、彼がキャリアをスタートさせた当時のオペラ界では、リハーサルに入る少し前に下剤を服用するという習慣があったとデル・モナコが語っていたのだ。
なので、当時リハーサルに入ると、先輩のオペラ歌手から「下剤はやったか?」と訊かれるのがごくごく当たり前だったという話だ。
今で言えば腸内洗浄して体調整えた上でリハーサルに臨むということか。
まぁ、確かに体調は整えられそうな気がしないでも無い・・・。
ふと、
「この大腸内視鏡検査を終えた後、もしかしたらものすごく声の調子が良くなってるんじゃ・・・。」
なんてバカなことを考えたりする。
そう言えば、声楽科の学生時代も
「この熱が下がったら、実は高音がめちゃめちゃ楽に出るようになってたりして・・・。」
なんて妄想したものだった。思考回路はあの頃から全く進歩していないらしい。
マリオ・デル・モナコ、その比類なき声
リビングとトイレを何度も行ったり来たりすることになり、その合間合間気を紛らわすために、ふとYouTubeでマリオ・デル・モナコの動画を検索してみた。
かつて、自分が声楽を学んでいた頃には観ることも聴くこともできなかったような海外の動画がたくさん出てきて、その映像の中で、若い日のデル・モナコや、おそらくオペラからは引退した頃であろう渋いデル・モナコが、あの独特の輝かしい声を響かせていた。
不覚にも涙がこぼれた。
やっぱり、デル・モナコはすごい。人間の声はスゴい。音楽はスゴい・・・。
初めての大腸内視鏡検査に向かう自分に、マリオ・デル・モナコはものすごいパワーをくれた。
Mille Grazie, Signore.
ただ、唯一の難点は、デル・モナコのOtelloやPagliacchiを聴いていると、ついついお腹に力が入ってしまうことだった。
だって、声は腹から出すものだから・・・。
今日も読んでくれてどうもありがとう。
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