「1枚の写真でその子の10年後が見える。」ジャニー喜多川
まさかこんな日がやってくるとは夢にも思っていませんでした。
もちろん、「誰にも可能性はある」
そのことはわかっていたつもりです。
でも、まさか自分にその番が回ってこようとは・・・。
自分にもその日が訪れることになったのです。
そう、大腸内視鏡検査デビューの日が・・・

バリケードで戦うある日訪れたこと
思い起こせばかれこれ15年前、日々バリケードで戦っていたある日、生まれて初めての人間ドックを経験した。
当時加入していた東京芸能人国民健康保険組合から送られてきた「不惑の歳・無料半日人間ドック」なるハガキを握りしめ、ドキドキしながら指定の病院に向かったのを昨日のことのように覚えています。(フリーで活動されてる方にはオススメです、東京芸能人国民健康保険組合。)
検査結果を聞くために向かい合った医師の口から出た質問は・・・
「最近、運動不足だったりするんじゃないですか?」

「いえ、1日に何度もバリケード上り下りしてますし、ワルツも踊ってます…3時間ちょっとの間に12回も着替えてるんで、同年代の人と比べれば運動してる方だと思うんですけど…。」
と心の中ではつぶやきながら、「はぁ…。」と中途半端な返事を返したのはワタシです。
「食事が肉中心になっていたりとか?」
「いや、納豆とキムチ、ですかね、最近よく食べてるのは。」
結果、ちょっと気になる点があるのでかかりつけの医者と相談して再検査をするように、と告げられた。
その後、出演者としてのキャリアに区切りをつけようと思ったのも、体調を崩してオーディションで合格していた作品への出演を辞退したことが一つのキッカケであった。
最後に出演した作品では、2週間で20回の公演があって見る見るうちに体重が減り、自分でも
「あれ、自分ちょっとヤバいかも。」という状態まで行った。
そして人生初の胃カメラの検査。
「1枚の胃カメラでその人の10年後が見える。」
そんな名医がいたら、今頃どんな人生を送っていただろう。
…あれから、何回胃カメラを飲んだことだろうか…。(汗)
「無事是名馬」
子供の頃に夢中になって観ていたテレビ番組にプロレス中継があった。
ジャイアント・馬場、アブドラーザ・ブッチャー、テリー&ドリーのファンク兄弟…やたらと興奮しながらブラウン管に見入っていた。
当時日本の二大巨頭、全日本プロレスのジャイアント・馬場と新日本プロレスのアントニオ・猪木は、いろんな意味で対照的だったけど、すごく印象に残っているのは馬場氏についての「無事是名馬」という言葉だった。
「プロとして観客の前で興行をするのであるから、怪我や病気で欠場ということは避けねばなるまい。」
というのが、馬場氏の基本的な考えである、というような記事を読んだ。
元・巨人軍のピッチャーである馬場氏ならではのプロというもの対する姿勢なのかも知れない。
それとは対照的に、猪木氏の方は「全力でやるんだから怪我もする。」というスタンス。
もっともこれはその記事を書いた人の両氏、両団体へのイメージであって、ご本人の口からそういう明確な発言があったわけじゃなかったのかも知れないと思う。
それでも、この「無事是名馬」という言葉はものすごく印象に残り、後に自分が舞台出演者として生活している間、一種、座右の銘のように心に刻んでいた言葉だった。
舞台は終わる、人生は続く
そもそも、舞台作品の稽古に入ると食生活が滅茶苦茶になる。
劇団時代には稽古場に食堂があり、本番が近づいて稽古が白熱してく時間的にはタイトでも、食事内容的にはかなりバランスを考えることができたような気がする。
これがその後、いわゆるプロデュース公演となると、食事内容もさることながら、朝から晩まで稽古場に缶詰状態で稽古をし、その間10分15分の休憩時間に朝コンビニで買っておいたオニギリかなんかを大急ぎで食べるようなことが日常茶飯事だった。
更に深刻なのはスタッフになってからで、出演者はシーンごと時間差で稽古場入りするようなことがあっても、スタッフはそうはいかない。
制作や演出部なんて、稽古場に一番早く来て一番最後に帰るのだ。
ほんと、芝居が好きじゃないとやってられるわけがない。
そんな中、
「トイレを取るか食事を取るか」
なんて状況の中で生活することになるので、胃腸の調子を整えるのもなかなか難儀なことなのだ。
そこで、老婆心ながら、今、舞台に精一杯打ち込んでいる若い人たちに一言、いや二言、いやもう少し?
「舞台に出られれば貧乏なんて我慢できる」
「食費を削ればなんとかなる」
のかも知れない。
でもね、あなたの人生続くのよ。その作品が終わっても。
でもって、今のそのツケはもっともっと後に回るのよ。
あなたのこの先の人生に。
もしかしたら、あなたの子どもに。
自分が病気したら家族や友人の世話にならなきゃいけなくなって、周りが大変な思いするかも知れないのよ。
なんかね、役者とか歌手って、「身体が資本」で、コンディション維持が大変で、
そういう点では(スポーツ選手と同様に)気を遣ってる人もたくさんいると思うけど、
実は問題はもっと先にあって、シャンデリアが落ちてくる作品も、バリケードが出てくる作品も、おっきなタイヤが宙に浮く作品も、ヘリコプター飛んじゃう作品も、いつか自分が関わらなく(関われなく)なる時が来るわけですよ。
そして、その頃のあなたの体は、今あなたが口にしているもので作られるのです。
自分がステージで最高のパフォーマンスを発揮できるようにするための健康管理も、もちろん大事。
でも、人生のステージ終盤で周りに犠牲を払わせることなく最後まで現役(=健康)でいられるための健康管理はもっと大事。
だって、今その作品の舞台(公演)は終わってもあなたの人生は続くから。
デビューを前にして、そんなことを考えてしまった・・・。

身体、大事にね。
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