「我々は、役者にならねばならん」
どうも、時間に追われなかなか劇場にも足を運べないので、せめて自宅で映画を観ようとAmazonプライムで「ピッチ・○ーフェクト」を観始めたのにすぐに飽きて、結局「英国王のスピーチ」を観てしまった小林です。
冒頭のセリフは、その「英国王のスピーチ」の中のジョージ5世が、クリスマスのラジオ放送を終えたところで、時代の移り変わりとともに王族も変わらなければならないと、息子のアルバート(ジョージ6世)に語るもの。
「英国王のスピーチ」は、このアルバートが主人公。
吃音に悩まされた彼と、その治療にあたった大英帝国構成国であるオーストラリア出身の平民ライオネル・ローグの友情を描いた作品です。
これ、前々から興味はあったもののなんとなく見逃していて、今回その内容が史実に基づいた話だと知りました・・・。
言語療法士という資格
「吃音 治療」のキーワードで検索すると、「言語聴覚士」が治療を行うという記事がたくさん出てきます。
ウィキペディア先生によれば、「言語聴覚士」とは
言語や聴覚、音声、認知、発達、摂食、嚥下に関わる障害に対して、その発現メカニズムを明らかにして、検査と評価を実施し、必要に応じて訓練や指導、支援を行う専門職である。
と説明されており、日本の場合、国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を必要とする国家資格です。
子供の発音・発声指導や、最近だと誤嚥肺炎が死因になる場合が多い高齢者の指導など、言語聴覚士の現場は広がっているようです。
実際に子供の発音指導の現場に立ち会ったことがありますが、ボイス・トレーニングの立場からも、ものすごく参考になることがたくさんありましたし、普段自分が教えていることの答え合わせのような瞬間もありました。

やっと忍苦の冬も去り・・・
「英国王のスピーチ」で、主人公アルバートの吃音治療(指導)にあたるローグは俳優で、実際アデレード大学で音楽を学んだ後、パースで演劇活動を行なっていたそうです。
映画の中で彼がリチャード三世の台詞でオーディションを受けるシーンが出てきます。
“Now is the winter of our discontent, Made glorious summer by this sun of York;”
(やっと不満の冬も去り、ヨーク家にも輝かしい夏の太陽が照りはじめた。)
この台詞、かつて劇団の役者時代に、当時の演出家がダメ出しやいろんなアドヴァイスをする際によく「やっと忍苦の冬も去り・・・」と語っていたので、妙に懐かしく思い出しました。
ローグは、俳優としての基礎訓練でもある①身体のリラックスや②呼吸、③早口言葉等の滑舌、④感情の解放、などのトレーニングを指導し、合わせてアルバートの幼少時代の思い出などから、心理面、人格の形成についても示唆し、導いていきます。
役者は心を扱う仕事
何よりもこの映画が史実に基づいていることに感動したんですが、それ以上に、アルバートが置かれている状況(王族であること、そうした立場でスピーチをしなければならないプレッシャー、一触即発の戦時下という極限状態での即位)で、吃音を乗り越えてスピーチをするということがどういうことなのか、それを共有できたのはローグが役者だったからに違いないと思ったら、めちゃめちゃ感動しました。
演劇というものは、それを観た人の人生を変えるほどのパワーを持ったものです。
もちろん、全ての作品がそうだと言ってるわけではありませんし、同じ作品でも、やる人と観る人の、人生おけるタイミングで全く違う結果になるものだとも思います。
ただ、それだけのパワーを持ったものだけに、役者は医者と同じように人の命を左右するぐらいの何かを背負って舞台に立っているのだと思わなければいけない場合もあるのではないかと考えることがあるのです。
役者は人の心を扱う仕事。
「英国王のスピーチ」を観て、久しぶりにそんなことを考えました。
うん、また映画観よう。
んじゃ、アリベデルチ!
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