自宅でできる“ボイトレに役立つ筋トレ”
最近話題になったテレビ番組で、NHKの「みんなで筋肉体操」というのがありました。
俳優の武田真治さんも出演されていた5分ほどの番組で、YouTubeにも動画がアップされていたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか?
ボイス・トレーナーとして仕事をしているとよく受ける質問に、
「やっぱり腹筋とかやった方がいいんでしょうか?」
というのがあります。
確かに、やらないよりはやった方がいんでしょうが、いわゆるマッチョな体型になるようなガチな筋トレ(腹筋とか)がそのまま直接ボイトレの効果向上に繋がるかというと、決してそうではありません。
もし、それで効果が見込めるんなら、格闘技の選手はみんなたまらなく美声揃いになるはずですから・・・。
ボイトレに関係する筋肉ということで言えば、ざっくり
- 呼吸に関わる筋肉
- 声帯の開閉・伸展(主に音程のコントロール)に関わる筋肉
- 共鳴に関わる筋肉
にわけられますが、この中でも2.と3.はまさにmm単位の筋肉(筋繊維)のレベルでの話になるので、いわゆる「自宅で簡単にできる筋トレ」というものには当てはまりません。
というわけで、ここでは1.の呼吸に関わる筋肉を鍛える(というよりはコントロールできるようにする)筋トレで、
どんなジャンルの音楽を歌う場合にも必ず役立つ、自宅で簡単にできる筋トレ
を紹介します。

横隔膜を制するものはボーカルを制す
横隔膜って聞いたことありますか?
横隔膜というのは、
胸とお腹の境目を作る膜状の筋肉(骨格筋)。
実はこの横隔膜、
自分の意思で収縮させることができる随意筋です。
(※随意筋=意識的に動かすことができる筋肉)
↑ここ、重要です。
自分の意思で収縮させることができる随意筋
なんですよ、知ってました?
つまり、
自分でコントロールできる=筋トレ可能
ということになります。
ただ、筋トレで筋肉を鍛えるためには、
まずは、その筋肉がどこにあるのかを知らなければいけません。
そこで、まずは自分の横隔膜を自覚するところからスタートしましょう。
私の横隔膜はどこにある?
普段の生活をしている中で、横隔膜の存在を認識できるのは・・・
- 咳(払い)をした時
- くしゃみをした時
- 大笑いをした時、
- 泣きじゃくった時
- しゃっくりをした時
など、鳩尾(みぞおち)を中心としたお腹の周りが動いた時です。
随意筋とは言いながら、
「え、自分、歌うときに横隔膜なんて動かした記憶ないですけど・・・。」

という人が多いんじゃないでしょうか?
そうなんです、なので、横隔膜を自覚しつつ筋トレをしていかねばなりません。
ボイトレに活きる横隔膜筋トレ
では、早速始めましょう。
まずは床に仰向けになります。
次に、その状態で蜂の羽音のような感じの「ズー」という音を出しみて下さい。
歯と歯の間から息を漏らす感じで、アルファベットの“Z”を鳴らしながら、音を伸ばすようなイメージです。
その時に「Zu〜 」とウの母音が聞こえないように、「Z〜〜」とZの振動がずっと続くようにして下さい。
音程は大体ト音記号で書いた楽譜の真ん中の「ソ(G)」のあたりがいいでしょう。
できましたか?
次にこの「Z〜」を伸ばしながら、以下の動きをやって下さい。
- まず頭だけ持ち上げて自分のつま先を見る
- 次に首から順番に床からゆっくりと上体を起こして行く。
(この時、目はつま先を見続けます。) - 上体を起こし切ったところで一旦終了、息を整える。
- 次に、「Z〜」と声を出しながら、これまでと逆に(つま先を見ながら)腰から順番に背骨を一つひとつ床につけるように仰向けの姿勢に戻っていく。
実際にやってみると、
腰の辺り、肋骨と骨盤の間のぜい肉がつきやすい部分が床から離れる(帰りは付く)ぐらいのタイミングで、「Z」が揺れる
ことに気がついたんじゃないでしょうか?
これ、動きそのものはいわゆる“腹筋運動”ですが、「Z」の(半分空気、半分声のような)音をキープし続けることによって、横隔膜を自覚しトレーニングすることができるんです。
この筋トレ、丁寧にコツコツ繰り返して練習すると、段々と「Z」に揺れが少なくなっていきます。
これはつまり、
息の流れを自分の横隔膜で制御できるようになってきた
ということです。
声楽のレッスンで先生が
「お腹で支えて」
という、極めて主観的かつ抽象的な指導をすることがあります。
この「お腹で支える」ということは、
呼気(吐く息)を横隔膜の働きで制御して、これから出そうとする音(=振動)に最適なものに調整する
ことを意味します。
横隔膜で呼気を制御して息の流れをコントロールできることは、音楽のジャンルに限らず、どんなボーカリストにとっても常に安定した歌を歌えるための土台となります。

是非、今回の横隔膜筋トレを繰り返し練習してみて下さい。
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