不惑の歳に知った事
「再検査の必要がありますね・・・。」
「えっ!?」
検査結果に目を落としたまま、こちらを見ずにそう言った医師の言葉に耳を疑った。
「肉ばっかり食べてるようなことありませんか?」
「いえ、どちらかと言えば納豆とキムチです。」
「運動不足になってませんか?」
「最近は1日に1〜2回はバリケード登ったり降りたりしてるんで・・・同じ年代の人と比べたら動いてるとは思うんですけど。」
医師から告げられた検査結果に動揺が隠せないせいか、
「どんな時でもどこかユーモアの精神だけは忘れないようにしよう」
という自らのモットーにも陰りが見えた気がした瞬間だった。
これは、当時加入していた東京芸能人国民健康保険で無料で受けられた「不惑の年・半日人間ドック」の時のお話・・・。
健康管理は“この道”を選んだ者の宿命
音大の声楽科受験を決心した時点で背負う宿命、それは・・・
「風邪との戦い」
何と言っても、2月〜3月はインフルエンザが猛威を振るう季節。
この季節に大学入試がある日本という国をどれほど恨めしく思ったことか。
(結局、現役時は風邪に倒れ見見事に散り、浪人時、2度目のチャレンジも体調を崩しながら、薄氷を履む思いでなんとか合格にたどり着いた苦い思い出が・・・。)
身を以て知る「体が資本」
時は流れ、自分がプロの俳優・歌手としてミュージカルの舞台に立つようになって、改めて感じたのがこの言葉。
何しろ、稽古場で誰かが風邪を引けば運命共同体。
舞台稽古に入れば、当然ながら季節感を完全に無視した衣装を着込み(場合によってはカツラにつけ髭して)、舞台上のホコリまで熱く照らす照明を浴びながら演じ歌い踊り、汗をかいたまま舞台転換を待ち、終わればダメ出しを受け、初日が開けば週に8回〜9回の本番をつとめる。
自分にとって歌が武器である以上、コンディションを崩して声に影響が出れば、プロとして舞台に立っている以上どんな評価を受けても反論はできない。
旅公演の時など当然ながら移動の連続なわけで、乗り物の中の空調、ホテルの空調、劇場の空調・・・夏は冷え、冬は乾燥と、
温度・湿度との戦いである。
旅先で体調を崩して公演先の土地の病院に駆け込むことも結構あって、診察券ばかりが増えていく時期もあった。
なので、当時、旅には必ず「医者からもらった薬がわかる本」を持ち歩いていたものだった。
「栄養は食事で摂ればいい」は本当か?
とにかく、風邪をひきたくなかった。
いいコンディションでストレスなく歌いたかった。
「ビタミン・バイブル」って本があるのを知って読んでみたり、ライナス・ポーリングというアメリカの生化学者(?)が提唱した
「ビタミンCを一定の時間をおいて継続的に投与すると風邪を引かない」
という理論を知ってすぐ薬局に走り、アスコルビン酸を買い込んで紅茶に溶かして飲み続けた。
「アリナミンA」「ポポンS」「パンビタンハイ」「キョーレオピン」と、総合ビタミン剤を試し続けた。
多分、その頃だったんじゃないかな「無事之名馬」という言葉を知ったのは。
※「無事之名馬」・・・競走馬を指して
「能力が多少劣っていても、怪我なく無事に走り続ける馬は名馬である」
とする考え方を表した格言。(時事新報の岡田光一郎によるものだそうです。)
全日本プロレスのジャイアント・馬場と新日本プロレスのアントニオ・猪木を比較して書かれた記事の中に出てきてた。
サプリメントは薬じゃないって知ってた?
その頃から今まで、ず〜っと何かしらサプリメントを摂り続けている。

こういう話をするとなぜか必ず(こちらが訊いてもいないのに)
「ふ〜ん、自分は栄養は食事で摂ることにしてるんから。」
という人がいるのだけど、もし、こういうタイプの人に、
「そうなんだね、昨日はどんなものを?」
と訊いたとすると、大体、
「昨日はね、野菜サラダと生姜焼きと味噌汁と・・・」
という答えが返ってくる。ただ・・・
「それって、献立で栄養じゃないですから。。。」
※サプリメントは栄養補助食品で医薬品ではありません、念のため。
そもそも、素人がメニュー考えたぐらいで栄養バランス取れるんなら、
栄養士なんて職業がこの世に存在するはずがない。
管理栄養士なんて人までいるんですよ、だって・・・。
プロの知識をなめちゃいけません。
なのでボクは、
サプリメントをうまく使うことは栄養士を雇っているようなもの
だと思っている。
例えば有機野菜からできてるサプリメントを摂ったとしても、同じことを普段の食事でやろうとすることから比べたら、はるかに手頃な値段でできるはず。
自分のカラダにその程度の投資さえしない、とかできない、としたら、そこは絶対改善すべきことだと思うわけです。

(ただし、サプリメントと一言で言っても本当にピンからキリまであるから、その点は要チェック。)
一番知っておかなきゃいけないこと。それは・・・
こんな風に書いてくると、何か自分がメチャメチャ健康志向でカラダに良くないものは一切口にしないみたいだけれど、決してそんなことはなくて、
ラーメンなんか大好きだし・・・

甘いものにも目がない・・・。

だからこそ、サプリメントやプロテイン(植物性のもの)を摂って、バランスを保つように気をつけてきたわけ。

そんな風に20代、30代、40代、と過ごして来て50代になり、最近一番感じることは・・・
「人間生きてりゃ誰でもいつかは歳を取る」
ということと、
「健康に気を配りながら生活してきても、カラダ(=肉体)そのものは当然老朽化してくる。」
という紛れもない事実。
不惑の年に医者から指摘され、再検査を重ねた結果、結局は「遺伝子レベルのもの」で、決して生活習慣によって起きたものではなかったらしく、要は「それだけ歳とった」ということみたい。
普通に生きてきても当然そう感じるタイミングは来たはずなんだろうが、
歌ったり踊ったりを自己表現の手段として選び、しかもそれを生業とした人間としては、これは正直かなりツラい。
極論で言えば、「人間は食べたものでできている」
だから、今これを読んでるあなたがもし役者や、歌手や、ダンサーなら・・・

食を中心に自分の生活習慣を真剣に見つめ直してみる機会は絶対必要だと思うよ、本当に。
身体が資本のプロならば絶対知っておくべきこと
- 自分のカラダがどんな風にできているか
- 自分のカラダにどんなエネルギー(栄養)が必要か

こういうことは知っておいて損はないよね。
後はね、自炊すること。
「食べることの大切さ」と「食べることの大変さ」の両方がわかる
から、自分で(後片付けまで含めて)料理することってめちゃめちゃ重要!
(大学に入って初めての一人暮らしの時に母親がくれた本、今も健在。)
(中華にイタリアン、味濃いめが好きなので調味料は良いもの使う。)
(有機JASマークだらけ。「♪100%有機〜」と歌いながら料理する。)
芝居にしろ、歌にしろ、踊りにしろ、一番コアにあるのは「自分が気持ちいい」ってことじゃないかと思う。
じゃなかったら、みんなそれ(演じること・歌うこと・踊ること)が「楽しい」なんて思わないはずだし、ましてやそれを仕事にして毎日やりたいなんて人はいないはずだから。
舞台のプロなら、「無事之名馬」は当然目指すべきことだけど、その一回一回「楽しく」「気持ちよく」いられるためには、
「自分のカラダにとって何が大切か」を知っておく、やっておく
ことだよね、キャリアの早いうちから。
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