今から楽譜を読めるようになるには移動ド唱法!
今回は音楽についてのけっこう真面目なお話です。
今、これを読んでいる人で
「私、絶対音感あるんで。」
とか、
「私は固定ドだけど?」
みたいな感想を抱いたとしたら、
今日の記事はあなたのような
これまでに専門の音楽教育を受けた経験のある人
に向けて書いた記事ではありません。
時間が勿体無いです。
悪いことは言いませんから、今すぐこの記事を閉じて他のことに時間を使ってください。
移動ド唱法って・・・なに?
そもそも、移動ド唱法って何か?
「百聞は一見にしかず」
とってもわかりやすい動画があったので、こちらをお借りして、
まずは、身体で(耳で?)移動ド唱法を体感しましょう。
どうですか?
「音楽には調(キー)というものがある」
ということは、ほとんどの人が何となくイメージがつくと思うんです。
※その調(キー)に合った音の並び(=音階)をスケールと呼びます。
なので、上の動画でも調(キー)が変わってすぐはちょっと違和感があっても、気がつくとどの調でも「ドレミファソラシド」(これを階名と呼びます。)違和感なく聞こえてきませんか?
この、
「キーが変わってもドレミファソラシドが違和感なく聞こえる人」
が、今回説明する“移動ド唱法”で楽譜を読むべき人です。
固定ド唱法と移動ド唱法
全ては音名と階名をごっちゃにして教えることが混乱の始まりだった・・・。
音の高さを表すのが“音名”ってやつで、国によって読み方が違います。
英語圏だとC(シー)D(ディー)E(イー)F(エフ)G(ジー)A(エー)B(ビー)C(シー)、間にある音はC#(=D♭でもある)、D#(=E♭でもある) なんて音名で呼びます。
これがドイツ語だと、いきなりツェー・デー・エー・エフ・ゲー・アー・ハー・ツェーといきなりドイツ語っぽさ丸出し(?)の音名です。
日本ではかつて、ハ・ニ・ホ・へ・ト・イ・ロ・ハという音名で読んでいました。
ここで注意しとかなきゃいけないのは、
音名と階名は別物だということ。
まず、音名。
例えば階段の一段一段にそれぞれ名前が付いていて、C段、D段、と書いてあるみたいな感じです。
あとは、劇場の客席に席番号が振ってありますよね?あれと似てるかも。

次に、階名。
これは(どこをスタートにしても構わないので)1番目、2番目、3番目・・・と並び順を示します。
例えば、あなたが道を歩いていて、目印となる交差点を示す時に、
「ローソン欅坂店の信号(=交差点)を右に曲がる」
という時の、ローソン欅坂店の信号は音名。
「ここから数えて三つ目の信号(=交差点)を右に曲がる」
と言った時の、三つ目の信号は階名。
同じ信号(=交差点)でも、固有の名称で呼ぶのと、他との関係性で呼ぶので、名前が変わりますよね?
これが、音名(固有)と階名(関係性)の違いです。
音を階名で呼ぶ(=歌う)のが、移動ド唱法
先ほどの信号機の例で言えば、自分が生まれ育った町であれば、
「横山薬局のところを右に曲がって、左側3軒目が私の家です。」
という表現で、
- 相手も同じ土地勘(幼馴染とか)があれば地図なしでもたどり着ける
- 相手の記憶がおぼろげでも地図があればたどり着ける。
ということになります。
ところが、今日初めてその町に来た人や、前にも来たことがあるけれど、そこまで一軒一軒詳しく知らないような人には、上の説明では通じません。
その場合には、
「今、あなたがいるのは地図のここで、ここから北へ進んで3つ目の信号を右に曲がって、その左手の3軒目に見えてくるのが私の家です。」
というように、
3. 現在地と次の通過地点と最終目的地点の関係性(距離と方角)で伝えてあげればたどり着ける。
ということになります。
「楽譜を読む」という音楽的な意味から言うと、
- 固定ド(絶対音感あり)
- 固定ド(絶対音感なし)
- 移動ド
と言うことになりますでしょうか。

絶対音感ってそんなにすごいの?
「あの人、絶対音感あるんだって!」「すごーい!!」
なんて会話を耳にすることがあります。
誰でも一度は聞いたことがあるんじゃないでしょうか、「絶対音感」
語感に有無を言わせない、無言の圧のようなものを感じますね。
「ゼッタイオンカン」
英語で、“Absolute Pitch”
ウィキペディア先生によれば、
ある音(純音および楽音)を単独に聴いたときに、その音の高さ(音高)を記憶に基づいて絶対的に認識する能力である。
のが絶対音感ということです。
音を聞いた時に
- その音がたった一つの音(非連続)でも
- 楽器等で確認することなく
- 音程を正しく認識・判定する
ことができる能力なわけですな。
逆に言えば、その音の高さ(音高)を記憶に基づいて認識する時の、認識→判断が絶対的ではない人も存在するわけです。
これが先ほどの固定ド(絶対音感なし)のパターン。
単独ではなく連続する音の関係性で音程を認識する能力のことを、“相対音感”と呼びます。
絶対音感ってどうすれば身につくの?
はて、じゃあその絶対音感、どうすれば身につくんでしょうか?
絶対音感を獲得するためには、何らかの後天的学習によってそれを脳内にインストールしなければならない。この能力を獲得させるためには、3〜4歳までに訓練を開始し、6歳くらいまでに終了することが必要であると経験則から言われている。すなわち、本来は連続てきな高さを持つ音を音符で分類してラベリングし、音の高さと音符との関係を人間の脳のなかの<ライトワンス脳>に書き込む訓練が必要である。
※ライトワンス脳・・・生後獲得した情報が安定して不可逆的かつ強固に保持されることによって発現する脳機能。生後の学習によって獲得された情報であるが、いったん書き込まれると長期間にわたって変更されることなく安定して保持される。コンピューターとのアナロジーでいえば、CD-Rなどのライトワンス・メモリーに当たる。
※一般社団法人 放送大学教育振興会刊/仁科エミ・河合徳枝著「音楽・情報・脳」より引用
つまり、今これを読んでるあなたが現在既に5歳以上で絶対音感を欲していたとすると、
残念ながら既に手遅れということです・・・。
ご幼少のみぎりから、音楽の英才教育を受けていないと絶対音感というのは身につかないのです。
一流の指揮者、ヴァイオリニスト、ピアニスト・・・そういった人たちは当然のようにそうした英才教育を受けて育って来ているんです。


この点は、正直、環境がモノを言います。
一方で、小さい頃からピアノのレッスンとかしていても、絶対音感を身につけさせること前提に教育していなければ身につかないものでもあります。

ただね、この絶対音感、実は音楽的才能とはちょっと別物なんですね。
カナダの音楽脳科学者ロバート・J・ザトーレらは、脳機能イメージングを応用した絶対音感を含む音楽知覚の研究の中で、絶対音感を持つ音楽家では、脳の聴覚情報を処理する領域の容量や音に反応する血流の増大が右脳を上回って左脳に偏る傾向があること、それに対して、絶対音感を持たない音楽家では、それらの面で左右の脳の均衡がとれていることを報告している。
※一般社団法人 放送大学教育振興会刊/仁科エミ・河合徳枝著「音楽・情報・脳」より引用
これがどういうことかと言いますと、絶対音感を持った人というのは、音楽という情報を
言語と同じように左脳で処理している可能性が高い
ということなのです。
乱暴に言えば、
「絶対音感の有る無しと音楽的才能には直接的な関係はない」
ということです。
固定ドの人からすると移動ドのことは理解できない?
音楽に限らず、教える側の立場にいる人はだいたいにおいて既にできる人です。
そこでの問題は、「できる人はできない人のことがわからない」ということが往往にしてあるということではないでしょうか?
言い方を変えると
わかっている人はわかっていない人の「わからない」という感覚がわからない
というややこしい状況です。
「その街で生まれ育った人にとって横山薬局の信号は横山薬局の信号であって、それがバス停から数えていくつ目の信号かなんてことはわからないし、そもそも考えたこともない。」
となると当然、横山薬局の信号は横山薬局の信号として教えられるので、昨日今日ここに来た人にとっては、バス停からそこに向かう時と、区役所からそこに向かう時で全く状況が違い、いつまで経っても思った時に思ったところに思ったように辿り着けないということに・・・。
なので、これから「楽譜が読めるようになりたい」と考えてる人は、移動ド唱法で勉強してみるといいですよ。
大丈夫、これを書いてるボクなんて「移動ドを通り越して異常ド」と言われるほど、読譜能力は低かったです。(正直、今でもそれほど高くはありません。)
最初だけ取っ付きにくく感じる移動ド唱法ですが、慣れてしまえば、
簡単な譜面なら楽器に頼らなくても音が取れるようになります。
最後に、移動ド唱法についてちゃんと学びたい人にぴったりの本を紹介しておきます。
正しいドレミの歌い方 (鳴海史生/大島俊樹著、アルテスパブリッシング刊)
こんな感じで移動ド唱法のわかりやすい説明と・・・
移動ドで階名が書き込まれた練習問題もありますが・・・
その間にはがっつり楽典についての勉強もできる、かなり濃い内容です。
※この手の本は、印刷部数が限られていてあっという間に消えていきます。
そうなるとなかなか手に入らなくなるので、迷ったらとりあえずゲットしておいたほうがいいです。
移動ド唱法で楽譜を読めるようになってもっと音楽を楽しもう
音楽は誰でも楽しめるもの。
聴いて楽しい、歌って楽しい。
ちょっと楽器が弾けたりしたらもっと楽しい。


楽譜を読めるようになればもっともっと楽しいです。
ミュージカルの舞台を目指す人だったら絶対必要。
だって、ほら、MUSICAL・・・ほぼ音楽でできている。
ミュージカルの舞台じゃなくても俳優だったら、
歌えて損なし、楽譜が読めたらアドバンテージ。
移動ド唱法、おすすめします♪
初めまして。著者の一人の大島俊樹です。『正しいドレミの歌い方』をご紹介いただきありがとうございます。
初めまして。こちらこそ、ありがとうございます!